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アフィニス夏の音楽祭 2019 長岡 室内楽演奏会 [1]

2019年8月23日(金) 19:00 長岡リリックホール・コンサートホール アフィニス夏の音楽祭 2019 長岡 室内楽演奏会 [1]

弦楽四重奏曲 第82番 ヘ長調 op.77-2 Hob.III:82/ハイドン
 Ⅰ.Allegro moderato
 Ⅱ.Menuetto:Presto ma non troppo
 Ⅲ.Andante
 Ⅳ.Vivace assi
  川崎洋介、猶井悠樹(Vn) 南條聖子(Va) 加藤陽子(Vc)
弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 op.18/ブラームス:
 Ⅰ.Allegro ma non troppo
 Ⅱ.Andante ma moderato
 Ⅲ.Scherzo:Allegro molt-Trio animato
 Ⅳ.Rondo:Poco allegretto e grzioso
  ヘンリック・ホッホシルト、 戸原直(Vn) 太田玲奈、デイヴィッド・メイソン(Va)  鈴木穂波,西村絵里子(Vc)
六重奏曲 ハ長調 op.37/ドホナーニ
 Ⅰ.Allegro appassionato
 Ⅱ.Intermezzo:Adagio
 Ⅲ.Allegro con senitiment
 Ⅳ.Finale:Akllegro vivace,grazioso
  吉岡 奏絵(Cl)  鈴木一裕(Hr) ヨーン・ストルゴーズ(Vn) 西悠紀子(Va) 玉木俊太(Vc) 居福健太郎(Pf)

第1スタジオを出て、2階へ登り、コンサートホールへと続く行列に並んで、無事入場。
感想は、「アフィニス音楽祭参加3組が作り出す室内楽の素晴らしさを十二分に堪能する」です。
まず1組目はハイドンの「弦楽四重奏曲 第82番」から。明るく柔らかに弾(はず)み、歯切れ良く、艷やかに輝いて、軽やかに鼓動を打ち鳴らし、若鮎の如き生命力で、生き生きと飛び跳ねるアレグロ。細やかに、切れ味良く刻み、柔らかで弾力を持った滑らかさで舞い、内側から喜びを照り返すメヌエット。ゆっくりと静かに動き出し、にこやかに微笑んで、悠々と歩を進めるアンダンテ。勢い良く、熱を込めて走り出し、軽快に光を放ち、紳士的に振る舞って、結末へと急ぐフィナーレ。上品さと熱っぽさをうまく混ぜ合わせて、極上の仕上がりで決めました。
続いてブラームスの「弦楽六重奏曲 第1番」。ゆらゆらと潮(うしお)が満ち始め、幾重にも折り重なって、時折水泡(すいほう)が割れ、乳白色の靄に覆われて、熱い想いが沸々と湧き出すアレグロ。愁いが深く心に沁み入り、幾筋も罅割(ひびわ)れが走って、波高く荒れる海へ漕ぎ出し、伸(の)し掛かる曇り空と対峙するアンダンテ。軽やかに跳んで、細き茎(くき)が伸び上がり、太き幹へと成長すると、黒く渦巻く気流が、大きく波打つスケルツォ。優しくも力強く、水面を蹴って、溢れ出す若さを存分に放出し、アツき記憶が、青春の名残を迸(ほとばし)らせて、力一杯駆け抜けるロンド。絡み合う情念を見事に解きほぐして、浪漫の香りを伝えました。
休憩を挟んで後半はドホナーニの「六重奏曲」。暗く翳(かげ)る雲間に、光が垣間見え、大きくうねる偏西風が、雨雲を呼んで、吹き荒れる嵐が、捧げられた松明(たいまつ)を吹き消すように、地上を走破する第1楽章。穏やかに朝靄が掛かり、不安の足音が忍び寄って、薄っすらと辺りを包み込むと、それを振り払うかのように、力強く前進し、行く手を切り開いて、地上に舞い降りる第2楽章。細やかに速く振動し、時に鋭く切り込んで、急き込むように追い込み、たっぷりと抱え込んで、憂鬱を解き放つ第3楽章。大急ぎで駆け出し、持てる熱量を全て吐き出して、滞留する蒸気を弾(はじ)けさせ、沸騰する液体を軽々と飛び越える第4楽章。襲い掛かる苦難を力に変えて、アツく激しい闘いを制しました。
会場からは大きな拍手が贈られ、六人の健闘を讃えました。
第一線の勇者たちによる素晴らしい演奏を十二分に堪能できたことに感謝して、喜ばしい気分で、帰りのハンドルを握りました。
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アフィニス夏の音楽祭 2019 長岡 プロムナードコンサート I

2019年8月23日(金) 18:00 長岡リリックホール・第1スタジオ アフィニス夏の音楽祭 2019 長岡 プロムナードコンサート I

六重奏曲 変ホ長調 Op.81b/ベートーヴェン
 Ⅰ.Allegro con brio
 Ⅱ.Adagio
 Ⅲ.Rondo Allegro

ジュリア・パイラント、鈴木一裕(Hr)
外園彩香、巖埼友美(Vn)
ポール・ペシュティ(Va)
イヴ・サヴァリ(Vc)

ゆったりとした休日の午前を過ごし、昼食を摂って、少し休憩し、高速を一路長岡へ。開演30分前に到着。
感想は、「公開セミナーの参加者によるプロムナード・コンサートを楽しむ」です。
曲目はベートーヴェンの「六重奏曲」一曲のみ。ゆったりと快活に弾(はず)み、明るく朗らかに足取りを進め、速足で階段を登って、清明な午後の薄明かりを受けるアレグロ。速度を落として、柔らかく伸びやかに包み込み、温もりの残る木製の器に、黄金の水を注ぐアダージョ。足早に飛び跳ね、艷やかにメリハリを付けて、輝ける曲線を描き、生きいきと楽しげに遊んで、豊かな立体を構成するロンド。音楽する喜びを交わし合い、真剣に熱意をぶつけ合って、素晴らしい成果を披露しました。
会場からは大きな拍手が贈られ、ここ数日での取り組みの見事な仕上がりを讃えました。
音楽祭が生んだ上質の演奏を間近で確認できたことに感謝して、快い気分で、本公演の行われるコンサートホールへ向かいました。

第22回日本電子音楽協会定期演奏会

2019年8月21日(水) 18:30 新潟市民芸術文化会館能楽堂 第22回日本電子音楽協会定期演奏会

undulation / floating organs/廣木勇人+映像:阿部康太
Caldera /カルデラ/田口雅之
《一二三松風》for a Shakuhachi and Computer /《hi fu mi matsu-kaze》for a Shakuhachi and Computer/福島諭+尺八:福島麗秋
Palimpseste / パリンプセスト/渡邊裕美
UTSURO-BUNE / 空舟/大谷安宏+振付:和田敦子 ダンサー:角正之
Makiginu-巻絹/宮木朝子+映像:小阪淳
Lake District for voice, soprano and electroacoustics / 湖水地方 ― 声・ソプラノと電子音響のための/小坂直敏+声・ソプラノ:Sara Perez

仕事を終えて、りゅーとぴあへ。開演5分前に到着。
感想は、「人間と電子機器が織り成す未知の体験を興味深く堪能する」です。
まずは廣木勇人の音楽に阿部康太の映像が加わった「undulation / floating organs」。短く鋭い断片が交差し、沈黙の間(はざま)に稲妻が走って、場面が切り替わり、薄く丸い靄(もや)が幾つもの触手を伸ばし、空間に漂うと、全てがかき消され、深海より気泡が浮かび上がり、滔々(とうとう)と水脈が溢れ出して、あらゆるものを流し去りました。
続いて田口雅之の「Caldera /カルデラ」。ゆっくりと警鐘が呼吸し、無重力の空間に、ふんわりと浮遊し、時を区切る閃光が走るたび、曲線が変化して、その幅を伸ばし、滑らかな鼓動を強く弱く打ち付けて、静寂の闇へ収束しました。
次は福島諭の「《一二三松風》for a Shakuhachi and Computer」。振り下ろされる重き槌音(つちおと)が山野に響き渡り、微かに漂う霧の薄絹(うすぎぬ)が纏(まと)わり付いて、吹き抜ける巻雲(けんうん)が風の中に棚引くと、雅(みやび)な奏でへと昇華し、透明な覆いで囲い、生命の息吹を取り戻して、振り出しへと逆流しました。
前半最後は渡邊裕美の「Palimpseste / パリンプセスト」。乾いた地平に砂塵(さじん)が舞い、蒸気を吹き上げて、上下左右を走り回り、小雨降る中、微細な破片が粉々に砕け散って、炭酸が泡立ち、幾筋もの裂け目を生じて、繊細な細糸(ほそいと)へ分解され、洞窟の天井から滴る水滴を数えて、吹く風に消え去りました。
休憩を挟んで後半は大谷安宏の「UTSURO-BUNE / 空舟」。陰鬱な空の下、売れる海が揺らぎ、水飛沫(みずしぶき)を上げて、ゆらりと浮遊し、梵鐘が包み込んで、粘りけのある体液を帯び、響きが調(しら)べへと移り変わって、乾いた六弦の記憶を呼び覚まし、ゆったりと重く揺蕩(たゆた)い、冥界からの使者により、水底へと引き戻されました。
続いて宮木朝子の音楽に小阪淳が映像を付けた「Makiginu-巻絹」。鮮やかな空白に鋭く切り込み、噴射される気流が言の葉を模して、未分化な会話を交わし、涼やかに鈴が鳴ると、厚くのびやかな煙の帯(おび)が長く連なって、空間を歪曲(わいきょく)し、警笛を繰り返して、彼方へと飛び去りました。
最後は小坂直敏の「湖水地方 ― 声・ソプラノと電子音響のための」。立ち込める水蒸気を背に、小声で呟(つぶや)き、木霊(こだま)が幾重にも絡み付いて、歌い出す声を掻き消し、剥離(はくり)する金箔(きんぱく)が空中で共鳴して、長き隧道(ずいどう)に響き渡り、冷たい滴(しずく)を落とすと、一瞬の静寂の後、歌声が戻り、翳りを纏って、谷川の清流に溶け込み、氷の刃(やいば)がその切っ先を光らせて、固く切り結ぶと、話し声を取り戻し、穏やかに収めました。
会場からは大きな拍手が贈られ、人間と機械が織り成す最先端の音楽作成の成果を讃えました。
ここ新潟で日本の電子音楽を担う方々の作品を鑑賞できたことに感謝し、喜ばしい気分で、家路を急ぎました。

ピアノサロンコンサート 古川大智・本間千朝

2019年8月18日(日) 13:00 ヤマハミュージック新潟店1階グランドピアノサロン ピアノサロンコンサート 古川大智・本間千朝

ベルガマスク組曲よりプレリュード/ドビュッシー
巡礼の年報 第2年への補遺『ヴェネツィアとナポリ』よりタランテラ/リスト
ピアノソナタ 第7番 変ロ長調『ピーターと狼』Op.83より第3楽章/プロコフィエフ
ポロネーズ 変イ長調『英雄』/ショパン
恋/星野源

古川大智、本間千朝(Pf)

みなとトンネルを4往復走って、身支度を整え、ヤマハミュージック新潟店へ。開演20分前に到着。
感想は、「高校生男女2人によるピアノのソロ及び連弾に、明日を生きる活力を頂く」です。
まずは女性のソロでドビュッシーの「ベルガマスク組曲」より「プレリュード」。照り付ける陽光の森に聳(そび)える寺院の鐘が打ち鳴らされ、余韻を引き摺って、優しく降下し、キラリと飛び散る水滴が飛び散って、大らかに、波がうねりを見せました。選手交代して、次はリストの「巡礼の年報 第2年への補遺『ヴェネツィアとナポリ』」より「タランテラ」。ごろごろと褐色の念珠が連なり、切れ味鋭く、銃弾を連射して、力強く飛び跳ねると、ゆったりと水面(みなも)が揺れ、煌めきが粒を成して、優雅に歌い、安らぎを楽しんで、活力を補充し、再び狂乱の舞踊へ向かいました。続くは連弾でプロコフィエフの「ピアノソナタ 第7番『ピーターと狼』」から第3楽章。ギザギザと刻む鋸(のこぎり)の刃を長く並べ、時折顔を出す親しげな調べが微笑んで、速足で飛ばし、やがて鋼鉄の破片を巻き込んで、歪(いびつ)な形態へと変化しました。男性の独奏に戻って、ショパンの「『英雄』ポロネーズ」。黒雲が巻き起こり、一陣の風がそれを吹き飛ばすと、誇らしげに旗を高く掲げ、白き光を背に、喜びを鼓舞すると、奔流する水が渦を巻いて、運河へと流れ込み、溢れ出す勇敢な耀きを伴って、堂々とした姿勢で、栄冠を勝ち取りました。最後は連弾で星野源「恋」。楽しげに弾(はず)み、生きいきと青春を謳歌して、心から湧き出(いで)る熱量を、輝かしく爆発させました。
会場からは大きな拍手が贈られ、若き俊英たちの健闘を讃えました。
希望に満ちた未来を夢見る若者たちの眩しい耀きに接して、微笑ましい瞬間に立ち会えたことに感謝し、喜ばしい気分で、帰路に就きました。

樅の木の下で ヴァイオリン&チェンバロ小品集

2019年8月17日(土) 19:00 ギャラリー蔵織 樅の木の下で ヴァイオリン&チェンバロ小品集

朝/グリーグ
古風なる樹の歌/吉松隆
亜麻色の髪の乙女/ドビュッシー

R博士の肖像/吉松隆
たんぽぽの花瓶/ 〃
すみれの花瓶/ 〃
木漏れ日のロマンス/ 〃

九官鳥のロンド/ 〃
抒情的瞑想 第3番 ユモレスク/シベリウス
抒情的瞑想 第7番 ロンドレット/ 〃
古風なる樹の舞曲/ 吉松隆
緑のワルツ/ 〃
虹色の薔薇のワルツ/ 〃
ベルベットワルツ/ 〃

道化師の昼の歌/ 〃
ペンギン公園の午後/ 〃
祭りのあと/ 〃

歌と踊り 第7番/モンポウ
樅の木/シベリウス

月の光/ドビュッシー
過ぎし春/グリーグ

エリーゼのために/ベートーヴェン
忘却の木の歌/ヒナステラ

ブラジル風バッハ 第5番/ヴィラ=ロボス
オブリヴィオン/ピアソラ

哀歌 1/モンポウ
哀歌 2/ 〃
哀歌 2/ 〃

小さな人形の子守唄/吉松隆
春 5月の夢の歌/ 〃
夏 8月の歪んだワルツ/ 〃
秋 11月の夢の歌/ 〃
冬 子守唄/ 〃

杉原桐子(Vn)
笠原恒則(Cemb)

仕事を終えて、ギャラリー蔵織へ。開演30分前に到着。
感想は、「一枚一枚頁(ぺーじ)を捲(めく)り、新たなる瞬間に出会う旅を大切な気持ちで楽しむ」です。
か細く紡ぐ絹糸が、やがて太く豊かに実りを迎えて、打ち寄せる波にキラキラと戯れる「朝」。どこか懐かしく、幼き日の陽光を浴びて、複雑な模様を、錦糸(きんし)で編み上げる「古風なる樹の歌」。木の温もりを伝え、低く身構えて、艶めきを伴い、水を跳ねて、高く飛ぶ「亜麻色の髪の乙女」。柔らかく穏やかに、物語の幕を開きました。
悪戯(いたずら)っぽく駆け出し、速く滑らかに刻む「R博士の肖像」。過ぎし日を懐かしみ、光の帯を長く曳いて、無邪気に戯れる「たんぽぽの花瓶」。軽やかでまろやかに円舞し、愉しげに遊ぶ「すみれの花瓶」。繊細な網目が煌めき、涼しげなかき氷が、力なく崩れる「木漏れ日のロマンス」。洒落っ気を一杯に盛り付けました。
速く、歯切れ良く弾(はず)み、足踏みをしながら、くるくると回る「九官鳥のロンド」。ゆっくりと飛び上がり、後ろ髪を引かれながらも、言の葉をやり取りする「抒情的瞑想 第3番 ユモレスク」。誇らしげに語り、嬉しい気持ちを一杯に抱えて、細やかに震える「抒情的瞑想 第7番 ロンドレット」。まったりと哀しみを揺らし、水面に広がる波紋に想いを馳せる「古風なる樹の舞曲」。可愛いキラキラを飾り、伸びやかに輪舞して、つらつらと筆跡(ふであと)を認(したた)める「緑のワルツ」。光を放つ綺羅星(きらぼし)が、ゆっくりと近寄り、はたまた遠ざかって、上空より降下する「虹色の薔薇のワルツ」。優しく引き留め、やんわりと抱擁し、細やかな水滴を散らす「ベルベットワルツ」。揺れ動く心の襞(ひだ)を美しく切り取りました。
けたたましく警報が鳴り響き、迫り来る影に怯(おび)えて、頻闇(しきやみ)の谷をにげまとう「道化師の昼の歌」。淡々と忍び寄る怖れが背筋を冷やし、低く飛び交う物の怪が鋭利な切っ先で空を切って、身を隠す陥穽(かんせい)を脅(おびや)かす「ペンギン公園の午後」。不規則な足取りで、暗い森を行き、切れ味の鋭い不安が、速足で飛び跳ねる「祭りのあと」。心の暗がりの蓋(ふた)を開け、禍々(まがまが)しき者共を召還しました。
懐かしさに寂しさをまぶし、ゆっくりと微睡(まどろ)みを誘(いざな)う「歌と踊り 第7番」。昔を振り返り、思い出に浸(ひた)って、夢見心地で過ごす「樅の木」。ひとときの安らぎに身を委(ゆだ)ねました。
休憩を挟んで後半はドビュッシーの「月の光」から。冷たい井戸水を汲み上げ、水面を揺らして、地上に降り立ちました。グリークの「過ぎし春」では、萌え出(いず)る新芽が、愁いの表情を見せ、薄明かりの谷間に、惜別の寒さを運びました。
続いてはベートーヴェンの「エリーゼのために」。サクサクとした砂糖菓子の触感で、綺羅びやかな錦繍(きんしゅう)を織り上げると、ヒナステラの「忘却の木の歌」では、千鳥足でふらつき、愁いを滲ませて、右へ左へとよろめきました。
次はヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ 第5番」。熱に浮かされたように悲しみを綴り、白日夢の霧の中で、嘆きの声を上げました。さらにピアソラの「オブリヴィオン」になると、気怠(けだる)い覆いを被せ、憂鬱が通り過ぎて、生温(なまぬる)い空気を纏(まと)い、夢の彼方へと旅立ちました。
ここでモンポウの「哀歌」を3つ。湖上の波立ちの上で、ゆっくりと揺れる「哀歌1」。ざわめきの間(はざま)を、ふらふらと彷徨(さまよ)う「哀歌2」。速い足取りで、光の広場を駆け抜ける「哀歌3」。簡潔な物言いで、胸の奥の思いを伝えました。
プログラム最後は吉松隆が5曲。繊細な秒針が細やかに時を刻み、幼少の頃の想い出の照り返しを描く「小さな人形の子守唄」」。故郷(ふるさと)の里山に遊び、山並みに沈む夕陽を背に、家路を急ぐ「春 5月の夢の歌」。冷たい風が吹き、月光が冴え渡って、寂しさが乱れ飛ぶ「夏 8月の歪んだワルツ」。木漏れ日を受け、燃え盛る暖炉の火を眺め、儚さに思いを寄せる「秋 11月の夢の歌」。淡々と時を過ごし、遥かな彼方にある希望を夢見て、満ち満ちる潮(うしお)にこの身を任(まか)せる「冬 子守唄」。季節の移ろいを淡い筆遣(ふでづか)いで切り取って、優しく仕上げました。
会場からは大きな拍手が贈られ、それに応えてのアンコールはフォーレの「夢の後に」。憂愁の調べを届けて、賑々しく終演となりました。
全体を貫く淡き叙情と、それを具現化する素晴らしき腕前が相まって、親密な空間を優しく包み込んで、得も言われぬひとときを醸し出して頂いたことに感謝して、喜ばしい気分で、帰路に就きました。