新潟シューベルティアーデ 秋のレクチャーコンサート 第4回 歌曲展 -晩年の作品を集めて-

2015年10月31日(土) 18:00 スタジオスガマタ 新潟シューベルティアーデ 秋のレクチャーコンサート 第4回 歌曲展 -晩年の作品を集めて-

Ⅰ 晩年の歌曲から
 シルヴィアに 田辺千枝子(S) 片桐寿代(Pf)
 漁師の歌 佐藤匠(Br) 片桐寿代(Pf)
 十字軍
 秘めた愛

Ⅱ 「白鳥の歌」から
(レルシュタープの詩による)
 愛の便り 高橋宣明(T) 栄長敬子(Pf)
 セレナーデ
 海辺にて 中森千春(Ms) 八子真由美(Pf)
 影法師

雨の東中通を急いでスタジオ・スガマタへ。開演15分前に到着。
感想は、「レクチャーと演奏の歌曲展でシューベルトの奥座敷へ招かれる」です。
まずは『晩年の歌曲』から。「シルヴィアに」の冒頭が歌われ、それに関する解説が出演者たちの寸劇で愉快でコミカルに紹介されました。それに続いてこの曲の歌唱がなされ、弾むようなピアノから、すらりと伸びたソプラノが快活に歌を届けて、トップバッターの責を果たしました。続いて譜例を多用してのバリトンの解説と歌。「漁師の歌」はまっすぐで彫りの深い歌声が端正に歌われ、「十字軍」では重厚で大きくどっしりと進められました。前半最後の「秘めた愛」では、変化する波を良く捕らえ、自在に乗りこなして喝采を浴びました。
休憩を挟んで後半は『白鳥の歌』から。「愛の便り」のポイントが実演入りで説明され、レルシュタープの詩を歌うテノールが微動する伴奏を伴って、心の動きの明暗をきれいに描き出して、天才の技を届けてくれました。さらに有名な「セレナーデ」を切なくも雄弁に響かせ、聴衆の心を鷲掴みにしました。最後はハイネの詩についた2曲をメゾソプラノで。曲調の話の中では、「もし~だったら」というシミュレーションを行い、作曲家の腕前を明らかにして聞く楽しみを倍増させてくれました。その後「海辺にて」を張りのある艶やかな声で情景を描写し、2人の心情をくっきりと伝えてくれました。さらに「影法師」では、重く鳴り渡る梵鐘の中、分身を幻視する主人公の苦悩に満ちた様子が表現され、詩の世界をまざまざと現出させました。
最後の音が消えると、出演者たちの素晴らしい演奏を讃える拍手が大きく会場に満ち、この卓越した歌曲の展覧会の終わりを喜びあいました。
数百もあるシューベルトの歌曲を紹介するこのシリーズは、有名曲はもちろん隠れた名曲を聞く機会を与えてくれる貴重なものであり、来年2月の本公演も楽しみになる良い催しとなりました。
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ウィリアム・プランクル&石井玲子 チェロとピアノのデュオ・リサイタル 東欧・ロシアの音楽

2015年10月31日(土) 14:00 新潟市江南区文化会館音楽演劇ホール ウィリアム・プランクル&石井玲子 チェロとピアノのデュオ・リサイタル 東欧・ロシアの音楽

チェロとピアノのためのソナチネ/コダーイ
ロマンス/スクリャービン
ルーマニア民俗舞曲 Sz.56/バルトーク
 1.棒踊り
 2.飾り帯の踊り
 3.踏み踊り
 4.ブチュム人の踊り
 5.ルーマニア人の踊り
 6.速い踊り
ヴォカリーズ Op.34-14/ラフマニノフ
チェロとピアノのためのプレスト/ヤナーチェク

チェロとピアノのためのソナタ ト短調 Op.19/ラフマニノフ
 Ⅰ.レント―アレグロ・モデラート
 Ⅱ.アレグロ・スケルツァンド
 Ⅲ.アンダンテ
 Ⅳ.アレグロ・モッソ

ウィリアム・プランクル(Vc)
石井玲子(Pf)

コンチェルトさんへ寄ってから、バイパスを一路江南区文化会館へ。開演50分前に到着。
感想は、「伸びやかなチェロと溢れるピアノを楽しむ」です。
まずはコダーイ。さざめく鍵盤の波しぶきの中から渋い輝きで姿を見せる弦の響きが印象的に流れ出し、快調なスタートを切りました。続くスクリャービンでは、艶やかでまっすぐな調べがゆったりと奏でられました。数曲からなるバルトークは、鰹節のおすましのような旨味(うまみ)を醸し出し、軽妙に跳ね上がり、舞い踊りました。さらに「ヴォカリーズ」の憂愁を沁みるように届けると、ヤナーチェクを弾むように飛ばして、前半を締めくくりました。
休憩を挟んで、後半はラフマニノフの「ソナタ」。憂いの旋律を艶やかに歌う1楽章、グロテスクなステップを踏みながらも鮮やかに奏でる2楽章、繊細にたっぷりと弾き抜ける3楽章、煌びやかな華やかさを内に秘めて颯爽と進む4楽章。その全てで美しくしなやかに描き切るチェロ、それを支え、時にきらりと光を放つピアノ。北国(ほっこく)の曇天を切り裂く一陣の風のような演奏で、聴衆を魅了しました。会場からは大きな拍手が贈られ、それに応えて、穏やかな曲がアンコールされ、つつがなく終演となりました。
東欧とロシアの普段聞く機会の少ない曲たちと、若干の馴染みの旋律を加えて、贈られたこのコンサートは、聞く側のレパートリーを広げる意味でも貴重なものであり、次の展開が待ち遠しいものとなりました。

鍵冨弦太郎 Presents 室内楽の調べ レスパス弦楽四重奏団

2015年10月29日(木) 19:00 りゅーとぴあ能楽堂 鍵冨弦太郎 Presents 室内楽の調べ レスパス弦楽四重奏団

第1部
5つのノヴェレッテ 作品15より「スペイン風」/グラズノフ
弦楽四重奏曲第18番イ長調k.464/モーツァルト
第2部
弦楽四重奏曲第76番ニ短調 作品76-2 「五度」/ハイドン
オブリビオン/ピアソラ
エスコラッソ/ 〃

レスパス弦楽四重奏団
 鍵冨弦太郎、小形 響(Vn)
 福井萌(Va)
 湯原拓哉(Vc)

仕事を終えて、りゅーとぴあへ。開演40分前に到着。
感想は、「精緻に仕上げられた弦楽の調べに聞き入る」です。
最初にBSNの女性アナウンサーが、今回のチャリティーコンサートと「愛の募金」活動について説明をしてから本編へ。
まずはグラズノフ。チェロのピッチカートが春の胎動を刻むとそれに乗って、弦楽の波が動き出し、穏やかで暖かな流れを生み出しました。途中秋の寂しさを一瞬のぞかせたのち、また輝きを取り戻して、曲を締めくくりました。続いてはモーツァルト。引き締まった音の塊りが4人を包みこんで始まった音楽は、活き活きと弾み、伸び伸びと歌い、優美に踊り、軽快に駆け抜けました。
休憩を挟んで後半はハイドンから。翳りのある一撃から疾風の勢いで急き込むと、艶やかで息の長い弓遣いでたっぷりと奏で、緩やかに旋律を繋いで、さらにほの暗くも厚い弦楽の響きを解き明かし、光の中へ解き放つように弾き切って、大きな拍手を受けました。
最後のパートはピアソラが2曲。「オブリビオン」を柔らかで艶やかに仕上げると、「エスコラッソ」を明るくも切なく追い上げて、喝采を浴びました。
それに応えてのアンコールは「八木節」。伝統芸能がタキシードを着たようなモダンで懐かしい声音(こわね)が能楽堂に炸裂して、にぎにぎしく終演となりました。
今回のコンサートは、和気藹々として登場した4人がいざ演奏に入ると、白刃をかざし合い、すきあらばなぎ倒さんばかりの気合で、あたりを制するその様に目を奪われ、過ぎ行く時間を忘れるほど熱中させられました。そして今度はさらにもっと強烈なプログラムを所望したい欲望に駆られながら帰路につきました。

コンチェルト インストアライブ 笠原恒則&大作綾

2015年10月25日(日) 19:00 コンチェルト インストアライブ 笠原恒則&大作綾

海の見える街/久石譲
小さい秋見つけた/中田喜直
グラスホッパー物語/高見のっぽ
バレット第1番/フレスコバルディ
モーレ・パラティーノ/スウェーリンク
高校三年生/舟木和夫
涙そうそう/森山良子
はるかなる故郷/植松伸夫
カロランの杯/カロラン
まっくら森のうた/谷山浩子
月のワルツ/諌山実生
千本桜/初音ミク

仕事を終え、いったん帰宅して、自転車でコンチェルトさんへ。開演40分前に到着。
感想は、「蔵の中で輝く光を帯びるチェンバロと縦横無尽に飛び交うリコーダー&歌にやられる」です。
まずは「海の見える街」。ノスタルジーを誘う旋律が縦笛の音(ね)に乗って届けられ、それを優しく包む鍵盤の響きで聴衆の心をグッと掴みました。続く「小さい秋見つけた」では、無意識のうちに歌詞が浮かび、情景が映し出される刹那に酔わされました。
次の「グラスホッパー物語」では、リコーダーから歌に替わり、女優魂炸裂の語りを交えて、昔日の冒険譚が目の前を駆け抜けました。
ここからはチェンバロからヴァージナルへ楽器を変更しての独奏。フレスコバルディを明るく和やかに、スウェーリンクを快活で楽し気に奏でて、その音色(ねいろ)に合った音楽を伝えてくれました。
さらにその楽器の特徴を生かす意味で、「高校三年生」が軽快でしかも濃厚に差し出され、「涙そうそう」が南西からの風を運んでくれました。
懐かしさが笛の音(ね)に託されて心を慰める「はるかなる故郷」が親密な空間を満たすと、「カロランの杯」で流浪の詩人の吟遊を爽やかに摸して、気分を更新しました。
チェンバロ一台で弾かれた「まっくら森のうた」は、繊細ながらも一抹の翳りを見せて、煌めきました。歌を入れての「月のワルツ」では、洒落た雰囲気の中に悲しみを湛え、少し突き放して、クールに仕上げられました。
そしてプログラム最後の「千本桜」。勢いを駆って走り出すビート、中空を吹き抜けるブレス、そのせめぎ合いが熱気を孕み、アツい興奮を掻き立てて、地上へ舞い降りました。
会場からは大きな拍手が贈られ、当然のようにアンコールが乞われて、「枯葉」がジャジーにスイングしました。それに加えて特別大サービスのおまけということで、本編での楽器と異なる編成での「はるかなる故郷」がチェンバロとリコーダーで届けられ、蔵織でのインストアライブをきっちりと締めてくれました。
鍵盤2台をまるでプログレ・バンドのキーボード奏者のように操る一方で、笛と歌でそれに応えるデュオの充分に練れた匠の演奏を楽しめたこの催しは、日曜日の夜を飾るにふさわしい素晴らしいものとなりました。

Japan tour PICADAE

2015年10月24日 18:00 器 Japan tour PICADAE

曲目は聞き取り不能のため省略。

Sigrun Tara Overland(vocal、lyre、auto harp)
Eirik Dorsdal(trumpet、kalimba、effects、vocal)

開演時間を思い違いしていて気が付くともう間に合わないタイミング。慌てて駆け出し、10分程遅れて到着。
感想は、「深遠なる北欧の響きに感じ入る」です。
店内前方のスペースに2人が並び、Taraは竪琴を弾きながら歌い、Eirikはミュート付きのトランペット、小さなシンセ、各種エフェクトを操作しながら演奏というスタイルで進んで行きました。低くベース音を発するシンセの上で、弱音機からの柔らかな金管が穏やかに広がり、リラを弾きながら歌う声が交差するのが基本的な編成。時々オートハープに変わったり、ミュートとマウスピースを外して鳴らしたり、ヴァリエーションを付けて、楽しませてくれました。まるで深海の底で鳴るような音楽は、深くたおやかな感触であたりを包み、それを切り裂くような女性ヴォーカルが耳を捕らえ、リラのつま弾きが不思議な静寂を際立たせました。途中小さなベルやシンバルを客席に配り、合図で参加を促して、一体になる場面もあり、親近感を醸成しました。最後は切なくも暖かい歌声で締めて、大きな拍手を受けました。
それに応えてのアンコールが2曲演奏され、1時間の公演を親し気にクローズしてくれました。
遥かノルウェーから4度目の来日。新潟には今回初めて来ていただいたこのデュオは静かで美しい白夜の音楽を透明に、快く我々に伝え、心を温めてくれる素敵な出会いをもたらしてくれました。
新しく発表されたアルバムを購入し、サインをもらって、感謝と再度の来訪の希望を伝えて、会場を後にしました。

ジョイントリサイタル 洋楽の夕べ

2015年10月24日(土) 14:30 りゅーとぴあ能楽堂 ジョイントリサイタル 洋楽の夕べ

大越玲子(Per)&倉澤桃子(Per)
 Trio Per Uno/ジュブコヴィッチ
五十嵐尚子(S)&佐藤世子(Cemb)
 童謡百曲集より/山田耕筰
  烏の番雀の番(野口雨情 詩)
  青蛙(三木露風 詩)
  電話(川路柳虹 詩)
  この道(北原白秋 詩)
Duo Anima
  加藤礼子(Vn)&前田美華(Vc)
 ヴァイオリンとチェロのための3つの二重奏曲 WoO27 第2番 ヘ長調/ベートヴェン
 ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423/モーツァルト

大越玲子(Per)&倉澤桃子(Per)
 プラトンの洞窟/カンジェロシー
五十嵐尚子(S)&佐藤世子(Cemb)
 陽はすでにガンジスから/スカルラッティ
 私を死なせて/ヘンデル
 私はジャスミンの花/ヴィヴァルディ
アモーレ・マルー
  風間左智(S) 丸山友裕(Rc) 丸山洋子(Cemb) 水島あや(バロックフルート)
  熊田美也子 井口歩(Vn) 森本麻未(Va) 瀬高伸一郎(Vc)
 弦楽のためのラ・フォリア/ヴィヴァルディ
 歌劇「ジュリアス・シーザー」よりクレオパトラのアリア~この胸に息のある限り/ヘンデル
 ラ・ベルガマスカ/ウッチェリーニ
 歌劇「アルタセルセ」より揺れる船のように/ブロスキー

昼食を取ってから、りゅーとぴあへ。能楽堂への長い階段を上って、開演15分前に到着。
感想は、「現代、古典、バロックの響きを一堂に楽しむ」です。
プログラムの前にソプラノ2名とチェロが登場して、ウエルカム&「携帯切ってね」ソングを軽妙に歌って、コンサート空間への誘いをしてくれました。
それに続いて本編第1弾の打楽器デュオ。三重奏を二人で行うもので、舞台中央に設(しつら)えられた楽器群を囲んで演奏が開始されました。枯れ枝のささやきからスリムな打音がわき出でて、リズムの饗宴が繰り広げられました。次は山田耕筰の童謡たち。はかなきチェンバロの奏でから、愉快に明るく時にくっきりと歌われて、晴れ晴れとした抒情を伝えてくれました。前半最後は、ヴァイオリンとチェロの二重奏。活き活きと若々しく情熱を伝えるベートーヴェン。落ち着いた素振りでゆったりとそして堂々と鳴り響くモーツァルト。弦の楽しみを充分届けてくれました。
休憩を挟んで後半は再度パーカッション。床に張られた打面を打ち鳴らす形で行われ、小気味よく弾むバチが舞い踊り、パントマイムのように虚空を叩く瞬間とも相まって、視覚・聴覚に訴えるパフォーマンスで酔わせてくれました。ソプラノとチェンバロのバロック編では、楽し気なスカルラッティ、悲痛な叫びが聞こえるヘンデル、歌が宙を舞うヴィヴァルディ。それぞれ当時の空気を再現するかのような歌唱に心奪われました。プログラム最後はバロックのバンド。クールでさわやかな響きで吹き抜ける「弦楽のためのラ・フォリア」。バロックフルートが加わっての「この胸に息のある限り」では低く悲し気に歌うソプラノが、時に急き込んで、また速度を落とし、悲哀を伝えました。歌い手が退出し、リコーダーの登場を得て、「ラ・ベルガマスカ」が華やかで賑やかに演奏されると、再度のソプラノで奏でられる「揺れる船のように」では激しく荒波に翻弄されて、劇的に展開されました。
会場からは大きな拍手が贈られ、今日の出演者全員が勢ぞろいして、カーテンコールが行われ、にぎにぎしく終演となりました。
今回はピアノを使わずというチャレンジだったにもかかわらず、多彩で素晴らしい演目、素早い場面転換とそれを補完する司会者のトーク&インタビュー、洗練されたステージマナーなど、良く考えられ、きちっと実行されて、後味の良い素敵なジョイントコンサートとなりました。これも関係者の方々の努力の賜物であり、新潟の音楽界の充実をしめすものであることを確認して、家路につきました。

風景旋律 vol.5 「あのころ」~時間への旅~

2015年10月23日(金) 19:00 りゅーとぴあスタジオA 風景旋律 vol.5 「あのころ」~時間への旅~

1時間目 『あのころ』~時間への旅
 映画「ALWAYS三丁目の夕日」より
 映画「千と千尋の神隠し」よりあの夏へ
 幸せの黄色いリボン
 映画「荒野の七人」よりメインテーマ
2時間目~みんなの『あのころ』
 あつまれ!スナップ
3時間目~ふたりの『あのころ』
 小さなプラネタリウム

仕事を終えて、りゅーとぴあへ。劇場での人気公演のため、大混雑の駐車場B~Dを避けて、Aへ逃げ込みました。
感想は、「映像と音楽のもたらす圧倒的な"懐かしさ"にどっぷりと浸る」です。
1時間目は映画の時間。プロジェクターから映し出される光景を包み込むようにあふれ出す笛の音(ね)と宝石のように輝く鍵盤の奏でる「ALWAYS三丁目の夕日」が空間に溶け出して、まろやかな雰囲気を作り出しました。続いては「千と千尋の神隠し」より「あの夏へ」。さざめくピアノの海の上を軽やかに飛翔するフルートが舞い、快いうねりを聞かせてくれました。
歌詞の内容のストーリーが高倉健主演の映画になった「幸せの黄色いリボン」では、ハッピーに楽しげに繰り広げられ、アップテンポながら、感傷を誘ってくれました。そして「荒野の七人」。2人とは思えない雄大なサウンドで颯爽と西部劇の劇伴を響かせてくれました。
2時間目はいろいろな方の昔日の写真が彩る時間。大人の階段を上ったり、悩み無き昨日の微笑みが憎らしかったりする旋律とはうらはらに、古き良き昭和の新潟の一場面が活写され、見る者の記憶と結びついて、忘れていた風景を思い起こさせました。
3時間目では、演奏者お二人の出会いであるプラネタリウムから。夕暮れから夜へと向かう海岸の移ろいが描かれ、さらに星空の神秘を照らし出し、自転車の籠に乗って飛び回る風情をまき散らして、穏やかに終章へ降り立ちました。
投影される画(え)と奏でられるデュオが、絡み合い、寄り添って、1幕の絵物語を見るようなこの公演は、日常を離れて、思い出の庭に遊ぶひとときを頂ける貴重な体験となりました。

東京交響楽団名曲コンサート りゅーとぴあ特割コンサート

2015年10月21日(水) 18:30 りゅーとぴあコンサートホール 東京交響楽団名曲コンサート りゅーとぴあ特割コンサート

歌劇「カルメン」より前奏曲/ビゼー
ディズニーのメロディによる管弦楽入門(楽器紹介)/小室昌広 編
  ナレーション:高野成之
 1.グループの紹介(星に願いを)
 2.フルート、ピッコロ(ハイ・ディドゥル・ディー・ディー)
 3.オーボエ(ホール・ニュー・ワールド)
 4.クラリネット(狼なんか怖くない)
 5.ファゴット(ビビディー・バビディー・ブー)
 6.ヴァイオリン(イッツ・ア・スモール・ワールド)
 7.ヴィオラ、チェロ(いつか王子様が)
 8.コントラバス(イッツ・ア・スモール・ワールド)
 9.ハープ(イッツ・ア・スモール・ワールド)
10.ホルン(美女と野獣)
11.トランペット(チム・チム・チェリー)
12.トロンボーン、チューバ(ジッパ・ディー・ドゥーダ)
13.打楽器(ミッキーマウス・マーチ)
14.トゥッティによるフーガ(エレクトリカル・パレード)
鍛冶屋のポルカ/ヨーゼフ・シュトラウス
歌劇「ウィリアム・テル」序曲/ロッシーニ
ワルツを踊る猫(ワルツィング・キャット)/アンダーソン
狂った時計(シンコペーテッド・クロック)/ 〃
そりすべり/ 〃
行進曲「威風堂々」第1番 ニ長調 /エルガー

飯森 範親(指揮とお話)
東京交響楽団(管弦楽)

一旦帰宅し、休憩の後、夕食を取ってから、りゅーとぴあへ。
感想は、「まさにエンターテインメント。東京交響楽団の芸達者ぶりに喜ぶ」です。
指揮者が登場し、挨拶の後、振り向きざまに指揮棒一閃して、「カルメン」へ。にぎやかに前奏曲を仕上げて、つかみはOK。続いてはピッコロ奏者をナレーターに迎えて、「ディズニーのメロディによる管弦楽入門」。手慣れた口調で紹介される楽器たちが映画音楽の主題歌を代わる代わる演奏して、その特徴をわかりやすく披露する傍らで、楽器を回したり、おかしな合いの手を入れて笑わせたり、サービスたっぷりに盛り上げると、ブリテンよろしく紹介順にフーガを奏でて、壮大に締めてくれました。次の「鍛冶屋のポルカ」では打楽器がカナトコを叩くのに合わせて、トンカチは出るわ、火消しの纏(まとい)は出るわ、の大騒ぎで、楽しくお祭りをしてくれました。
そして「歌劇『ウィリアム・テル』序曲」。冒頭のチェロ五重奏が精妙に歌われると、怒涛のように「嵐」が過ぎ去り、イングリッシュ・ホルンとフルートの「牧歌」が穏やかに流れ、「スイス軍の行進」が華やかに駆け抜けました。
ここからアンダーソンが3曲。猫や犬の鳴き声で喧しい「ワルツィング・キャット」。ウッドブロックの秒針が巧妙に狂う「シンコペーテッド・クロック」。トナカイやサンタが指揮を乗っ取る「そりすべり」。楽団員の"おふざけ"が炸裂して、爆笑を誘いました。
プログラム最後は、りゅーとぴあ専属オルガニストが登場しての「威風堂々」。きびきびと進むマーチ、美しくも力強く奏でられるトリオ。ホール全体を響かせる力技で感動をもぎ取りました。
会場からは大きな拍手が贈られ、それに応えてのアンコールは「天空の城 ラピュタ」から「君をのせて」。優しく胸に迫る旋律が心を震わせるように鳴り渡り、コンサートを締めくくりました。
毎年市内の小学5年生に向けて行われる「わくわくキッズコンサート」に付随して行われるこの演奏会は、低料金で親しみやすい選曲、親し気なトークと、各所にちりばめられたギャグまで入れて、東京交響楽団の名曲演奏を楽しめる素晴らしい企画であり、これが今後とも続くことを祈って、会場を後にしました。

第281回ミニコンサート ピアソラ~タンゴの世界

2015年10月21日(水) 12:20 新潟市役所1階市民ロビー 第281回ミニコンサート ピアソラ~タンゴの世界

オブリビオン/ピアソラ
ブエノスアイレスの春/ 〃
ブエノスアイレスの冬/ 〃
フーガとミステリオ/ 〃

経麻朗タンゴカルテット
 経麻朗(Ele-gt)
 庄司 愛(Vn)
 渋谷陽子(Vc)
 斉藤晴海(Ele-p)

10km走った後、少し休憩してから、市役所へ。開演30分前に到着。
感想は、「めくるめくタンゴのゆらめきに心躍る」です。
まずは「オブリビオン」。静かに歌いだす弦の調べに、溢れだす波のような鍵盤の奏でが応え、押し寄せる音の奔流を作り出しました。六弦の装飾がそれに輝きを与えて忘却の曲を彩りました。
続いては「ブエノスアイレスの春」。木々が萌え出(いず)るような旋律から、生命の息吹が競い合って進むように音楽が歩き出し、アルゼンチンの薫りをあたりに振りまいて、鮮やかに着地しました。さらに「ブエノスアイレスの冬」では、ゆったりと始まり、自在に変幻して、憂愁の舞踏を舞いました。プログラム最後は「フーガとミステリオ」。ヴァイオリンのつぶやきから、次第にチェロ、ギター、ピアノが絡み合い、タンゴの姿を築き上げて行きました。落ち着いた雰囲気とは裏腹に熱を帯びる演奏は、聞き手の心に火をつけ、満場の客席からは大きな拍手が贈られました。
それに応えてのアンコールは、"ピアソラといえばこれ!"の「リベルタンゴ」。お馴染みのメロディを沸き立たせる伴奏と相まって、一番の興奮を誘いました。
ポピュラーな曲が並ぶことが多いロビー・コンサートで、本格的な曲たちをぶつけてくる姿勢に感嘆し、それをはっしと受け止める観客にも頼もしさを覚えて、今後の展開が楽しみになってくる水曜の午後となりました。

この世は舞台 ステージで聴く古楽器 2nd series ④リュート

2015年10月20日(火) 19:00 新潟市江南区文化会館音楽演劇ホール この世は舞台 ステージで聴く古楽器 2nd series ④リュート

イギリス ルネサンスの音楽 シェイクスピア 🍀 ソネット

時は花祭りの5月/モーリー 合奏

運命は我が敵/バード 笛、歌+ヴァージナル
ソールズベリー伯爵のパバーヌ/ 〃 ヴァージナル
ボニー・スウィート・ボーイ/不詳 リュート
ソネット 52
舞曲/不詳 合奏

古いスパニョレッタ/ファーナビー ヴァージナル
明日はバレンタイン・デー/シェイクスピア 詞 歌
魔女の踊り(マスク)Ⅰ・Ⅱ/ジョンソン 合奏
ちょっとだけ恋/不詳 シターン
ソネット 24
パッキントンのパウンド/不詳 リュート
パイパー氏のババーヌ/ピアソン ヴァージナル

良き仲間との気晴らし/ヘンリー8世 クレムホルン
愛の果実/ホルボーン 合奏
ラ・ヴォルタ/バード ヴァージナル+シターン
蜂が蜜吸うところで/ジョンソン 歌+ヴァージナル
悲しみ/モーリー リコーダー+ガンバ

涙のパバーヌ(ラクリメ)/バード ヴァージナル
ソネット 113
涙のパバーヌ(ラクリメ)/ショップ リコーダー+ヴァージナル

今こそ別れ/ダウランド 歌、合奏

白澤亨(Lute 他色々)
大作綾(歌、リコーダー)
笠原恒則(ヴァージナル)

仕事を終えて、夕闇の亀田バイパスを江南区文化会館へ。
感想は、「はるか400年の時を超えて降臨したルネサンスのイギリスに打たれる」です。
まずは合奏での「時は花祭りの5月」。典雅で精妙な響きが流れ出すと、一気に時代をさかのぼり、舞台は16世紀の英吉利へ。そこはかとない音色(ねいろ)が移ろい、まわりの空気が鮮やかに一変しました。
お話しの後、第1のくくりが始まり、最初は「運命は我が敵」。すがすがしい薫りで演じられる軽妙なる手合わせの応酬が楽しみを運んでくれました。続く「ソールズベリー伯爵のパバーヌ」では、木霊(こだま)が弾(はじ)けるようにくっきりと奏でられるヴァージナルに耳を奪われました。次の「ボニー・スウィート・ボーイ」は秘めやかに鳴るリュートのささやきにじっと聞き入りました。ここで入るソネットの朗読が孤高なる気高さを持って場を引き締めました。このパートの最後は再度合奏で「舞曲」。飾り気がなくも楽し気な祭りを聞かせてくれました。
第2のくくりになっての最初は、「古いスパニョレッタ」。鮮明につま弾かれるヴァージナルが心地よく伝わりました。さらに「明日はバレンタイン・デー」が軽やかに歌われ、雰囲気を和らげると、「魔女の踊り」でいっきに盛り上げました。
一転「ちょっとだけ恋」をシターンがひっそりと届けて、ソネットの朗読へ。一人の思いが人生の真実を映し出して、心を打ちました。続けて弾かれた「パッキントンのパウンド」はリュートが奥ゆかしく旋律を語り、さらにヴァージナルで「パイパー氏のババーヌ」が雅(みやび)やかに昇華されました。
第3のくくりでは、まずちょっと気分を変えて、「良き仲間との気晴らし」がクレムホルンの三重奏でにぎにぎしく奏されました。そして「愛の果実」が賑やかに合奏され、ヴァージナルとシターンの二重奏での「ラ・ヴォルタ」はぴったりと寄り添い、ときに分かれて、楽を紡ぎました。歌が空間を律し、垂直に上昇して豊かに歌われた「蜂が蜜吸うところで」に魅せられた後、低く垂れこめる「悲しみ」に聞き入りました。
第4のくくりでは、「涙のパバーヌ」が2人の作曲家のものをヴァージナル独奏で穏やかに、深淵なるソネットを挟んで、リコーダーを加えてじっくりと引き渡してくれました。
最後は「今こそ別れ」を歌とヴァージナル、ビオラ・ダ・ガンバ、リコーダーなどを駆使して、しっかりと締めてくれました。
盛りだくさんの演目のため、アンコールはなくそのまま終演となりましたが、約1時間のプログラムにも関わらず、内容は多岐に富み、知的興味と音楽的充足を頂き、大満足の仕上がりとなりました。
次回の「クリスマス」編にさらなる期待をかけて、夜道を快適に飛ばして、帰路につきました。