楽路歴程 蔵織占拠 四日目 「今度はB面抜きで」

2017年1月30日(月) 19:00 ギャラリー蔵織 楽路歴程 蔵織占拠 四日目 「今度はB面抜きで」

バロック・ホーダウン/ペリー&キングスレイ
ラ・クンパルシータ/ロドリゲス
リベルタンゴ/ピアソラ
タンゴ・アン・スカイ/ディアンス
真田丸メインテーマ/服部 隆之
情熱大陸/葉加瀬太郎
花市場/coba
Tomorrow/ストラウス
崖の上のポニョ/久石譲
ルパン三世80/大野雄二
Night Birds/シャカタク
ダイアモンド/奥居香

仕事を終えて、蔵織へ。開演40分前に到着。
感想は、「2台のチェンバロが作り出す響きの大海に溺れる」です。
まずは「バロック・ホーダウン」。響板の平面で軽やかに遊ぶ音達が弾(はず)んで心の回廊を巡りました。続いて「ラ・クンパルシータ」。めくるめく銀の足取りがくるりと踵(きびす)を返し、紫煙を棚引かせました。次の「リベルタンゴ」では華麗なる機銃を掃射し、速足で駆け抜けました。ここから二段鍵盤でのソロで最初は「タンゴ・アン・スカイ」。弧高(ここう)の嶮(けわ)しさを湛え、凛とした佇まいで立ち、切なさを編み上げました。続くは「真田丸メインテーマ」。武骨に切り刻み、アツく言葉を重ねて、鋼(はがね)の格子(こうし)を築き上げました。デュオに戻っての「情熱大陸」ではさらりと湧き上がり、吹き抜ける流線形を交差する歩調がしっかりと支えて、カッコよく決めました。さらに「花市場」になると、咲き誇る耀きの中に、煌めく翅(はね)を垣間見せ、妖しげに揺らめきました。選手交代で一段鍵盤の独奏。「Tomorrow」がキラキラと微笑み、朗らかに華やぐと、「崖の上のポニョ」で楽しげに行進して、明るさを振りまきました。三度目の二重奏で届けられたのは「ルパン三世80」。颯爽と走り出し、洗練されたノリで飛ばして、気持ちよくスイングしました。そして「Night Birds」。繊細な糸を織り、愁いの布を重ね合って、かつての祝祭を懐かしみました。プログラム最後は「ダイアモンド」。嬉しさが溢れ出し、暖かく飛翔して、歓喜を届けました。
会場からは大きな拍手が贈られ、それに応えてのアンコールは「バレスタイン城」。ノリノリで炸裂して、にぎにぎしく終演となりました。
チェンバロ2台が至近距離で演奏する迫力を間近で感じ、共鳴する響きに酔いしれるこの演奏会は、貴重な体験をする場面を提供するまたとない機会であり、素晴らしいひとときを過ごせたことに感謝して、家路を急ぎました。
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Noism1新作 近代童話劇シリーズ Vol.2 『マッチ売りの話』+『passacaglia』新潟公演

2017年1月28日(土) 17:00 りゅーとぴあスタジオB Noism1新作 近代童話劇シリーズ Vol.2 『マッチ売りの話』+『passacaglia』新潟公演

第1部 マッチ売りの話
第2部 passacaglia

芸術監督:金森穣
副芸術監督:井関佐和子
Noism1:中川賢、石原悠子、池ヶ谷奏、吉﨑裕哉、リン・シーピン、浅海侑加、チャン・シャンユー、坂田尚也

蔵織を出て、りゅーとぴあの6階展望ラウンジでブログの準備をしてから、
スタジオBへ。開演30分前に到着。
感想は、「日常的感情の渦巻く第1部、抽象が響き合う第2部を目の当たりにする」です。
第1部の幕が上がり、屹立する神性が穏やかに表情を映すと、場面が変わり、貧困と悲惨が狂気を伴って徘徊し、暴力と猥雑さが埋め尽くして、群像を弄(もてあそ)び、様々に集合離散して、闇の中に物語を進めました。暗く照らされた舞台で吐き出される憎悪や、変形した愛情が蠢(うごめ)き、野卑な喜劇が無表情で通り過ぎて、不気味さと滑稽を伝えました。やがて大いなる存在が舞い降り、次々とそれらを浄化して、割り切れない結末へと導きました。そのまま一人踊る後ろで、装置が一掃され、舞台が均一になると第2部へ。共鳴する声を身に纏(まと)い、対の喜びをいっぱいに交わし合い、湧き出る群集が混乱を拡散し、壁を行き来して孤独に収束し、多様に広がって、透き通る耀きで満たしました。
会場からは大きな拍手が贈られ、何回もカーテンコールが行われ、にぎにぎしく終演となりました。
今までにない切実さと痛みを含んで、現実と想念が入り混じる今回の公演は、新しき挑戦と積み上げた実績が花開くエクセレントな出来栄えで観客を魅了したことに感動して、会場を後にしました。

楽路歴程 蔵織占拠 二日目 「白澤さんが店開き」

2017年1月28日(土) 14:00 ギャラリー蔵織 楽路歴程 蔵織占拠 二日目 「白澤さんが店開き」

リコーダー 初期
 ベルナルディーナ/フレスコバルディ
シンフォニー
 ブランル/作者不詳
シターン
 ちょっとだけ恋/作者不詳
ドゥルチアン・アルト
 何を洗いましょう/作者不詳
中世フィドル
 舞曲/作者不詳
フルス
 金色の孔雀/作者不詳
リュート
 ウィロビー卿のご帰館/ダウランド
ヴィオラ・ダ・ガンバ バス
 調子の悪い鍛冶屋/ヘンデル?
クレムホルン
 ブランル/プレトリウス
ポンマー
 ダンス・ロワイヤル/作者不詳
ビウエラ
 ファンタジー/ミラン
サックバット
 スパニョレッタ/プレトリウス
テイバーパイプ
 田舎の踊り/作者不詳
ゲムスホルン
 聖ヴェンセスラスの賛歌/作者不詳
スピネット
 アルマンド/レイエ
バロックフルート
 プレリュード/オトテール
ダブルフルート
 素晴らしい夜/作者不詳
パルドッシュ
 アリア/フガール
リコーダー 後期
 ディヴィジョン/フィンガー

白澤亨(Gamb他色々)
笠原恒則(Cemb、スピネット)

所用を済まし、10km走って、昼食を取ってから、蔵織へ。開演15分前に到着。
感想は、「ずらりと揃った楽器群の様々な音色(ねいろ)を楽しむ」です。
今回の趣向は、観客が目の前にある楽器の中からどれが聞きたいかをリクエストし、それに応えてプログラムに並べられた曲目を演奏するというスタイル。まず1曲目は演奏者からの提案で初期のリコーダーでのフレスコバルディの「ベルナルディーナ」。細やかで可愛げに囀(さえず)りました。ここから注文を受けての選曲で、まずはシンフォニーというハーディーガーディーの前身の弦楽器による「ブランル」。包み込む響きの中、籠るよう旋律が囁(ささや)きました。続いてマンドリンを平たくしたようなシターンで「ちょっとだけ恋」。甘やかで柔らかい爪弾(つまび)きがふんわりと弾(はず)みました。今度は管楽器の出番ということでファゴットの親戚のドゥルチアンの登場。「何を洗いましょう」がまったりと延ばして、ちょっと悲しげに流れ出しました。弦に戻って中世フィドルで届けられたのは作者不詳の「舞曲」。飄々(ひょうひょう)とした気分を弓使いで表現しました。メニューにない中国の楽器のフルスが選ばれての「金色の孔雀」。長鳴きを揺らし、急ぎ足で畳み込んで、彩りを重ねました。西洋に戻って、お馴染みのリュート。ダウランドの「ウィロビー卿のご帰館」が透き通った青空の抜けるような爽やかさで聴衆を魅了しました。さらにヴィオラ・ダ・ガンバでのヘ「調子の悪い鍛冶屋」では、ヘンデルの名曲にいたずらを仕掛けて、可笑しみを誘い、そのままチェンバロで原曲を。銀の砂を踏みしめ、忙しげに機(はた)を織りました。次はクレムホルン。震える羽音が、暗くおどけた舞いを披露しました。さらにポンマーで「ダンス・ロワイヤル」が試し吹きされて、その音色(ねいろ)を伝えました。
休憩を挟んで後半は、ウクレレに似たビウエラから。かそかき寂しさを淡々と奏でると、本日唯一の金管楽器のサックバット。プレトリウスの「スパニョレッタ」が丸々と気流を集め、哀しさを滲(にじ)ませました。さらにテイバーパイプでの「田舎の踊り」では片手に笛、もう一方の手でぶら下げた太鼓を叩いて、賑やかに囃(はや)し立てました。そしてゲムスホルン。「聖ヴェンセスラスの賛歌」が、暖かで緩(ゆる)やかな音色(ねいろ)で癒しました。ここでスピネットの独奏。レイエの「アルマンド」が甘美で切なげに煌めきました。続くはバロック・フルート。オトテールの「プレリュード」を綿毛(わたげ)のようにふわりとくぐもらせ、優しげに捧げました。リコーダー二本を同時に吹くダブル・フルートでは遠い呼び声が支え合い、被り合って、なだらかな地層を描きました。リクエストの最後はパルドッシュ。フガールの「アリア」で哀切の調べを届けると、後期のリコーダーでフィンガー「ディヴィジョン」。落ち着いた温もりを愉しげに歌って、心休まる雰囲気で締めてくれました。
会場からは大きな拍手が贈られ、多様な楽器を自在に操る業師(わざし)の偉業を称えました。
古い時代の響きをここ新潟に再現し、珍しい響きで満たしてくれた今回の催しに感謝して、会場を後にしました。

楽路歴程 蔵織占拠 一日目 「この蔵は舞台」

2017年1月27日(金) 19:00 ギャラリー蔵織 楽路歴程 蔵織占拠 一日目 「この蔵は舞台」

島へ/武満徹
めぐり逢い/ 〃
翼/ 〃
〇と△の歌/ 〃
明日ハ晴レカナ、曇リカナ/ 〃
夢見る雨(ハープシコードのための、1986)/ 〃
組曲「過ぎ行く季節に」(リコーダーとチェンバロのための、2003-2004年)/松崎泰治
 忘れられた秋
 雪の夜に
 春の足音
 海の向こうへ
小さな空/武満徹
三月のうた/ 〃
死んだ男の残したものは/ 〃

大作綾(歌、Rec)
笠原恒則(Cemb)

仕事を終えて、一旦帰宅し、自転車で蔵織へ。開演40分前に到着。
感想は、「シンプルな歌とチェンバロの響きに聞き入る」です。
まずは武満徹の歌によるプログラム。「島へ」が軽やかで爽やかに影を纏(まと)って届けられると、「めぐり逢い」を暁(あかつき)の光を浴びた哀しみで彩り、「翼」では碧(あお)く澄んだ希望の水彩画を描きました。さらに「〇と△の歌」が、力の抜けた元気さでコミカルな味も交えて歌われ、「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」をしんみりと静かに始め、一転活力を取り戻して、弾むように駆け出しました。
ここでチェンバロ独奏で「夢見る雨」。水滴が滴(したた)り落ち、屈折して増殖し、不安げに変容し、様々に形を切り替えて、透明に揺蕩(たゆた)いました。
次はリコーダーとチェンバロで松崎泰治の「組曲『過ぎ行く季節に』」。哀愁を帯び、暖かな日差しの中を歩む「忘れられた秋」。懐かしく、穏やかな調べが沁みる「雪の夜に」。募る想いを解き放ち、湧き上がる気持ちを描き出す「春の足音」。波打つように陽光を照らして、ウキウキと遊ぶ「海の向こうへ」。親しみを込めて、風景を映しました。
武満徹の歌の後半の2曲。「小さな空」が透き通る叙情を清々(すがすが)しく伝え、「三月のうた」では、遠い昔の悲しみを淡く切々と綴って、じわじわと胸に迫りました。プログラム最後は「死んだ男の残したものは」。悲痛な現実を簡潔に表し、徐々に感情を露わに放射して、溜めていた力を絞り出しました。
会場からは大きな拍手が贈られ、それに応えてのアンコールは加藤昌則の「あしたのうた」。楽しげに賑わして、快い終演となりました。
4日連続の"蔵織占拠"の1日目は、歌と言葉の力をまざまざと見せつけるひとときとなり、現代日本の音楽の一面を切り取って見せてくれた貴重な時間を共有できたことに感謝して、家路を急ぎました。

りゅーとぴあアウトリーチ事業 第2期登録アーティスト連続演奏会  金子由香利 フルートと室内楽の夜

2017年1月26日(木) 19:00 りゅーとぴあスタジオA りゅーとぴあアウトリーチ事業 第2期登録アーティスト連続演奏会  金子由香利 フルートと室内楽の夜

フルート四重奏曲 第1番 二長調 K.285/モーツァルト (Fl+Vn+Va+Vc)
 Ⅰ.アレグロ
 Ⅱ.アダージョ
 Ⅲ.ロンド-アレグロ
Nidi(ピッコロのための)/ドナトーニ (Picc Solo)
『ベルガマスク組曲』より「月の光」/ドビュッシー (Fl+Hp)
フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ/ 〃 (Fl+Va+Hp)
 Ⅰ.牧歌
 Ⅱ.間奏曲
 Ⅲ.終曲
フルート奏者のための「Voice」/武満徹 (Fl Solo)
グリーンスリーブスによる変奏曲/フルーリー (Fl+Hp) 
リノスの歌(フルート、ハープ、弦楽トリオ版)/ジョリヴェ (Fl+Vn+Va+Vc+Hp)
歌劇「カルメン」より 第3幕への前奏曲/ビゼー (Fl+Vn+Va+Vc+Hp)
「カルメン」の主題による華麗なる幻想曲/ボルヌ ビゼー (Fl+Vn+Va+Vc+Hp)

金子由香利(Fl)
廣川抄子(Vn)
佐々木友子(Va)
渋谷陽子(Vc)
山宮るり子(Hp)

仕事を終えて、りゅーとぴあへ。開演45分前に到着。
感想は、「幅広い選曲と巧(たく)まざる音楽性に感動する」です。
まずはモーツァルトの「フルート四重奏曲 第1番」。気負わずにふっと立ち上がり、鮮烈な彩りの弦楽に乗って、薄霞(うすがすみ)の筆致で描き出すアレグロ。点在する光の粒子の間を哀愁の足取りで彷徨(さまよ)うアダージョ。華やぎを集め、急ぎ足でさざめくロンド。軽やかで明朗な姿を照らし出しました。続いてピッコロ一本でドナトーニの「Nidi」。無作為に囀(さえず)り、鳴き声を乱反射させて、氷片を鏤(ちりば)めました。次はドビュッシーが2曲。フルートとハープで届けられたのは「月の光」。甘やかにふっくらとした口当たりの生地で吹き抜け、夢見るように微睡(まどろ)んで、優しく癒しました。前半最後は「フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ」。くぐもった息吹が低く垂れこめると、一転、穏やかな晴れの波間の上を飛び交わす「牧歌」。夢と現(うつつ)を行き交い、嫋(たお)やかに揺れる「間奏曲」。美しく透き通った素振りで活発に格闘し、速く遅く自在に曳き合って、位相を変える「終曲」。新しさと懐かしさをないまぜにして、聞くものを蠱惑(こわく)しました。
休憩を挟んで後半は、独奏で武満徹の「フルート奏者のための『Voice』」。不気味な響きで竹林を騒がせ、掠(かす)れた声音(こわね)で大気を震わせ、時折言の葉を交えて驚きを誘い、気柱に穴を穿(うが)って、流れを変容させました。ハープが加わり、フルーリーの「グリーンスリーブスによる変奏曲」。爽やかなそよ風がもの思いに耽(ふけ)り、やがて細やかに溶け出して、緩(ゆる)やかに重なり、ゆっくりとその形を変えて行きました。ここからはフル編成で、ジョリヴェの「リノスの歌」。混沌とした騒(ざわ)めきが支配し、時に小さな嵐を巻き起こし、着飾ったまま歩き出して、どんよりと澱(よど)みました。そのままの形態でビゼーの「歌劇『カルメン』より 第3幕への前奏曲」。柔らかに歌い、暖かに奏でて、優しさを匂い立たせました。プログラム最後はボルヌの「『カルメン』の主題による華麗なる幻想曲」。鮮やかに色を変え、生きいきと立ち上がり、人懐(ひとなつ)こく振舞い、妖艶に舞い踊り、忙し気に追い立てて、誇らしげに立ち回りました。
会場からは大きな拍手が贈られ、それに応えてのアンコールはモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」より第2楽章。美しく競い合って、しっとりとした終演となりました。
古典から現代まで、幅広いレパートリーで楽しませてくれた今回の演奏会が新たなる地平を聴衆に切り開き、今後の展開が楽しみになることを予感させ、充実した触感を残してくれたことに感動して、会場を後にしました。

Shimohoncho Quartet 第1回演奏会

2017年1月22日(日) 14:00 だいしホール Shimohoncho Quartet 第1回演奏会

春の海/宮城道雄
 高橋光江(Cl) 奥村京子(箏)
クラリネットとオーケストラのための「ロマンス」変ホ長調 AV.61/R.シュトラウス
 高橋正紀(Cl) 山際規子(Pf)
BLOOM/松本英明
 奥村京子(箏) 山際規子(Pf)
月夜の古城/伊藤エイミーまどか
 高橋正紀(Cl) 奥村京子(箏) 山際規子(Pf)
ホワイト・フォレスト/水川寿也
 高橋光江、高橋正紀(Cl) 奥村京子(箏) 
「アルルの女」組曲/ビゼー 高橋正紀編
 ・前奏曲
 ・メヌエット
 ・アダージェット
 ・カリヨン
 ・パストラール
 ・間奏曲
 ・メヌエット
 ・ファランドール
 高橋光江、高橋正紀(Cl) 奥村京子(箏) 山際規子(Pf)

蔵織より戻り、昼食を取ってから、だいしホールへ。開演20分前に到着。
感想は、「溢れ出る音楽への情熱に感動する」です。
まずは箏とクラリネットで「春の海」。ゆったりと揺蕩(たゆた)う雅(みやび)が匂い立ち、緩急を付けた波立ちが舞い散って、冒頭を飾りました。続いてリヒャルト・シュトラウスの「クラリネットとオーケストラのための『ロマンス』」がピアノ伴奏で。爽やかに明るく吹き抜け、夢見がちな気分を熱い迸(ほとばし)りで満たし、きらりと氷片を飛び散らせて、軽やかに着地しました。次は箏とピアノでの「BLOOM」。切迫して追い込む鍵盤が鳴り響き、やがて抜け出し飛翔する箏、舞い踊り、細やかに刻んで、前のめりに突き進みました。この編成にクラリネットが加わって届けられたのは「月夜の古城」。寂しげに吹く一陣の風に空からの光の滴(しずく)が滑り落ち、雪原を照らし、架空の記録映像の付帯音楽のように、昂(たか)ぶりを誘(いざな)って、伝えられました。前半の最後はピアノが退場して、「ホワイト・フォレスト」。夕暮れの憂愁を映し出し、豊かなさざめきを醸し出して、勢いよく駆け抜けました。
休憩を挟んで後半は全員でビゼーの「『アルルの女』組曲」。三つ巴で響く旋律が主導する中、高鳴る息吹が達筆の足取りを残し、鼓動が複合して調べを纏(まと)め上げると、ゆるゆると長閑(のどか)に安らぎで納める「前奏曲」。すっきりと弾(はず)み、大きく満ち引きする「メヌエット」。長く延びた微睡(まどろ)みが眠りを誘う「アダージェット」。伽藍に木霊(こだま)して時を告げ、愁いの表情で沈み込む「カリオン」。丘の上をおおらかに吹く風を装い、押し寄せる抒情を奏で、翳りのある面持ちで歌う「パストラール」。高く厚い壁を乗り越えて、切なくも優しい声音(こわね)でうねる「間奏曲」。淡く爪弾く糸の上をくっきりと航跡を描く笛の音(ね)が被(かぶ)さり、美しい余韻を燻(くゆ)らす二つ目の「メヌエット」。力強く歩き出し、熱を帯びて加速し、賑(にぎ)やかに祭りを彩る「ファランドール」。歌劇の面影を投影し、心に染みる味わいを運んで、鮮やかな輝きで聴衆の訴えかけました。
会場からは大きな拍手が送られ、それに応えてのアンコールは「情熱大陸」。カッコよく飛ばして、にぎにぎしく終演となりました。
通常ではありえない編成での演奏を、あたかもこの組み合わせのために作られたような錯覚を覚えさせる瞬間を作り出すこの四重奏の本気度にあふれた営みが大きな感動を生み出したことに満足して、会場を後にしました。

コンチェルト・インストア蔵ライブ フルート&クラリネット

2017年1月22日(日) 11:30 ギャラリー蔵織 コンチェルト・インストア蔵ライブ フルート&クラリネット

ジムノペティ No.1/サティ
草の想い/久石譲
Walts For Debby/Evans
野ばら/シューベルト
音楽に寄す/ 〃
「ロザムンデ」より間奏曲第3番/ 〃
交響曲第7番ロ短調「未完成」/ 〃
軍隊行進曲/ 〃

江口鮎美(Fl)
岩渕仁美(Cl)

所用を済ませて、蔵織へ。開演30分前に到着。
感想は、「2本の管楽器の醸し出す美音を楽しむ」です。
まずはサティの「ジムノペティ」。薄紫の香りがゆらゆらと揺蕩(たゆた)い、鮮やかな光と影が交差して、甘やかにオープニングを飾りました。続いて久石譲の「草の想い」。影が差す懐かしさが滔々(とうとう)と流れ出し、胸を締め付けるように過ぎ去りました。次はビル・エヴァンスの「Walts For Debby」。ふんわりとそよぎ、さわやかに吹き抜けました。ここからはシューベルト特集。最初は「野ばら」。ひらひらと舞い飛び、上下に分かれて、並走し、細やかに刻んで、その形を変えました。「音楽に寄す」になると、柔らかで暖かに歌い、ゆったりと調べを交わしました。さらに「ロザムンデ」では、優しく夢見がちな息吹が、明るく快さを誘い、切なげに揺らめいて、その姿をたなびかせました。ここでちょっと重量級の「未完成」交響曲からの抜粋。絡みつくように浮かび上がり、まろやかな棘(とげ)で旋律を飾り、間髪を入れずに劫火(ごうか)を放ち、高く低く山野を巡って、三度(みたび)の鉄槌(てっつい)で締め括りました。プログラム最後は「軍隊行進曲」。弾むように進み、快活にはねて、快晴の青空を映しました。
会場からは大きな拍手が贈られ、それに応えてのアンコールは同じくシューベルトの「子守歌」。安らかに心を癒して、穏やかな終演となりました。
フルートとクラリネットのデュオによるインストアライブが響きの良い蔵の中でその真価を発揮し、楽しいひとときを頂いたことに感謝して、会場を後にしました。

ベルリンフィル八重奏団

2017年1月19日(木) 19:00 りゅーとぴあコンサートホール ベルリンフィル八重奏団

軽快なセレナード/ニールセン
5つのバガテル Op.47(八重奏版)/ドヴォルザーク シェーファー編
 第1曲 アレグレット・スケルツァンド
 第2曲 テンポ・ディ・メヌエット、グラツィオーソ
 第3曲 アレグレット・スケルツァンド
 第4曲 カノン、アンダンテ・コン・モート
 第5曲 ポーコ・アレグロ
八重奏曲 D.803/シューベルト
 第1楽章:アダージョ-アレグロ
 第2楽章:アダージョ
 第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ
 第4楽章:アンダンテ
 第5楽章:メヌエット、アレグロ
 第6楽章:アンダンテ・モルト-アレグロ

ベルリンフィル八重奏団
 樫本大進、ロマーノ・トマシーニ(Vn)
 アミハイ・グロス(Va)
 クリストフ・イゲルブリンク(Vc)
 エスコ・ライネ(Cb)
 ヴェンツェル・フックス(Cl)
 シュテファン・ドール(Hr)
 モル・ビロン(Fg)

仕事を終えて、りゅーとぴあへ。開演40分前に到着。
感想は、「黄金の響きに酔いしれる!」です。
まずはクラリネット、ファゴット、ホルン、チェロ、コントラバスによるニールセンの「軽快なセレナード」。不思議な異国風の調べが絡み合い、草原の匂いが立ち上(のぼ)り、広い海原(うなばら)を航行して、さざめく波頭を受け、楽しげに弾(はず)んで、賑やかに駆け抜けました。続いてドヴォルザークの「5つのバガテル」。匂い立つ土の香りを纏(まと)い、淡い哀愁が微かに薫る第1曲。うっすらとした灯火(ともしび)が寄せては返す第2曲。愁いの表情で、故郷(ふるさと)の舞を踊る第3曲。穏やかに移ろい、入り組んだ模様を描いて、層を成す第4曲。大地の息吹に洗練された衣装を着せて小走りに急ぎ、俯(うつむ)きながら濃厚な節回しで歌い、大勢が集まって華やぐ祭りを祝う第5曲。懐かしさを醸し出し、明るさを内に秘めて、親しげに奏でました。
休憩を挟んで後半は、シューベルトの「八重奏曲」。徐(おもむろ)に溢れ出し、快活に体を揺すり、響きを競い合い、旋律を受け渡して、千変万化の彩りを映し出す第1楽章。穏やかに振舞い、まろやかに癒し、気品ある馨(かぐわ)しさで誘い、長く澄んだ大気で満たす第2楽章。生きいきと跳ね、屈強な気概をチラリと見せ、小気味良く舞踏し、時に優しげに流す第3楽章。優雅に気取り、徐々に加速して、細やかに飾り、厚く幅を拡げ、様々に変転させて、やんわりと纏(まと)める第4楽章。ゆったりと上昇し、ふんわりと延ばして、ふっくらと舞い踊る第5楽章。小さな嵐を巻き起こし、前を向いて歩き出し、活発な跳躍を華麗に見せ、活力を漲(みなぎ)らせてお互いを鼓舞し、結末へと急ぐ第6楽章。己(おのれ)の技の冴えを音楽の喜びへと昇華し、相互に刺激を与えあって、高みへと駆け上(のぼ)り、素晴らしい成果で聴衆を魅了しました。
会場からは万雷の拍手が沸き上がり、数回のカーテンコールの後も延々と鳴りやまず、閉まりかかった舞台の扉をこじ開けて、アンコールがなされ、興奮を鎮めて、穏やかに終演となりました。
世界の頂点にいる演奏者たちの卓越した腕前を、ここ新潟でも享受できる喜びに打ち震えて、幸せな気分で会場を後にしました。

第296回ミニコンサート 箏・尺八「薫風之音」新春コンサート

2017年1月18日(水) 12:20 新潟市役所1階市民ロビー 第296回ミニコンサート 箏・尺八「薫風之音」新春コンサート

春の海/宮城道雄
七つの子~夕暮れのしらべ/原曲 本居長世 作編曲 鯨岡徹
365日の紙飛行機/角野寿和、青葉紘季
糸/中島みゆき
まゆだまのうた/長沢勝俊

所用を済ませ、少し休憩してから、市役所へ。開演30分前に到着。
感想は、「晴れた日に相応(ふさわ)しい和の響きを楽しむ」です。
まずはお馴染みの「春の海」。ゆったりと弾(はじ)ける絃(いと)の波間を吹き抜ける竹林の囁(ささや)きが青空に舞い、絡み合って、長閑(のどか)なひとときを描きました。続いて童謡を編曲した「七つの子~夕暮れのしらべ」。小高い丘に駆け上がり、薄墨で染めた懐かしさを届けて、優しく癒しました。次は朝ドラの主題歌の「365日の紙飛行機」。柔らかにお花畑で花びらを散らせ、明るく翅(はね)を広げて、喜びを伝えました。さらに「糸」では寂しさを塗(まぶ)せた希望が香り立ち、淡い願いを燻(くゆ)らせて、沁み渡る旋律を手渡しました。プログラム最後は「まゆだまのうた」。雪原の上を通り過ぎる木枯らしが胸を締め付け、絡み合う響きが千々(ちぢ)に乱れて、穏やかに収まりました。
客席からは大きな拍手が贈られ、それに応えてのアンコールは「花は咲く」。聴衆の歌声を誘い出し、親しげな雰囲気での終演となりました。
新春のロビーコンサートを飾る箏と尺八の調べが、胸の内に潜む和の心に共鳴したことを確認して、会場を後にしました。

りゅーとぴあアウトリーチ事業 第2期登録アーティスト連続演奏会 小黒亜紀 ピアノ・リサイタル

2017年1月17日(火) 19:00 りゅーとぴあスタジオA りゅーとぴあアウトリーチ事業 第2期登録アーティスト連続演奏会 小黒亜紀 ピアノ・リサイタル

ソナタ ホ長調 K.380/スカルラッティ
ソナタ ホ長調 K.531/ 〃
ソナタ ト短調 K.35/ 〃 
ノクターン 第2番 変ホ長調 op.9-2/ショパン
ノクターン 第13番 ハ短調 op.48-1/ 〃
ポロネーズ 第6番 変イ長調 op.53「英雄」/ 〃 
ハンガリー狂詩曲 第12番 嬰ハ短調/リスト 
ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 op.18(ピアノ2台版)/ラフマニノフ
 第1楽章 モデラート
 第2楽章 アダージョ・ソステヌート
 第3楽章 アレグロ・スケルツァンド

小黒亜紀(Pf)
中川賢一(Pf、協奏曲伴奏)

仕事を終えて、りゅーとぴあへ。開演40分前に到着。
感想は、「内に秘めた情熱が一気に燃え上がる様に感動する」です。
まずはスカルラッティのソナタが3曲。清らかな日差しを受け、簡潔な触感で弾(はず)み、光と影が交錯する「K.380」。広い野原を駆け巡り、軽やかに泉が湧き出す「K.531」。闇(やみ)を抜け、迫りくる悲しみの気配に背を向けて、希望へと走り出す「K.35」。端正で硬質な輝きを描き出しました。続いてショパン。甘やかな調べを高貴で深く、心に沁みる響きで届ける「ノクターン 第2番」。翳りを纏(まと)い、ゆっくりと歩き出し、やがて想いが熱く溢れ出す「ノクターン 第13番」。勢いを増し、機銃を連射して、速足で駆け抜け、美しく華麗に飾って、雄々しく叫ぶ「ポロネーズ 第6番」。馨(かぐわ)しい香りを楽器から導き出し、聴衆を魅了しました。前半最後はリストの「ハンガリー狂詩曲 第12番」。憂いを含んで重々しく進み、激しく昂(たかぶ)る序盤から、繊細に囀(さえず)り、やがて跳ねるように踊り出して、熱狂を描写しました。
休憩を挟んで後半はラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」。静かに打ち寄せる波が次第に盛り上がり、大きな流れを成し、荒れ模様の海原(うなばら)に拡がり、うねりを巻き上げて、浪漫を映し出すモデラート。薄っすらと切なさを包み込み、叙情的に揺れるアダージョ。明るくも哀愁を帯びた装いで飾り、抑えていた感情を徐々に過熱して、一気に火を噴き、焔(ほむら)を輝かせて、結末へと走り去るアレグロ。一途な想いを鍵盤に乗せ、弦を震わせ、筐体を打ち鳴らして、音楽の女神を会場の空間へ解き放ちました。
最後の一音が消えると、大きな拍手が場内に満ち溢れ、それに応えてのアンコールはドビュッシーの「月の光」。漂う興奮を結晶の煌めきで収めて、穏やかに終演となりました。
2年間経験を積み上げ、沢山の刺激をものにして、より大きな姿を見せてくれたこの演奏会は、これからの新潟の音楽界に新たなる光を照らし、大いなる果実をもたらしてくれるであろうことに感動して、会場を後にしました。