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回想~ティンパニ購入顛末記~クラシック音楽におけるお金の使い方の一事例 その1 


「すごい提案があるんだけど。」

十数年前のその日私はN大オーケストラの打楽器パートの練習を先輩という立場で、オブザーバーとして他のOBと共に参加していた。場所は同オケが通常使用しているN大医学部の厚生施設内の音楽練習室。トレーナーとして来ていただいている日本を代表する在京オーケストラのひとつSフィルのK先生のレッスンに立ち会うためだった。
その提案の内容としては
・現在K先生が新しいティンパニを購入するが、そうなるとSフィルで今使っているものが不要になり、売りに出さなければならない。それをN大オーケストラに譲りたいのだが、どうだろうか。
・そのティンパニはオランダ製のもので、革のヘッドを張っており、その音質はK先生が目指す音楽にはかかせないものである。台数は5台。これでかなりのレパートリーに対応できるようになる。
・価格は元の値段の四分の一程度で譲る。
・幸いN大オケの練習室併設の楽器保管場所にはまだ余裕があり、そこに充分入ることが想定される。
とのことで、検討してもらえないかということだった。
「新車1台分ですね。」
「そうだね。破格の金額だと思うのだけれど。」
この話を聞いて、私の頭の中では、あるひとつの思い出がよみがえっていた。

それはさかのぼること十数年前のこと。当時私は関東方面に就職して、K県のC市にある会社の独身寮におり、そのころC市に出来たばかりのアマチュアオーケストラに参加していた。創立まもないということもあって、打楽器(ティンパニ)は所有しておらず、話を聞くと団として買う予定はあるのでそれまで待ってもらいたいとのこと。そのオケとは妙に相性がいい感じだったので、その言葉を信じ、練習に通いだした(見学が主だったが、練習後のファミレスでの会話を楽しみにしていたので)。
しばらくして楽器購入の話が具体化し、その話の中で資金としては団長(お医者様)のポケットマネーからとりあえず支出し、数年を掛けて返済する形で行うとのことだった。
「車を買おうと思って貯めていたお金があるので、それを充当しますよ」
とのことで"ありがたい!"申し出であった。

「今度は俺の番だな。」
私はそう思った。十数年前に受けた恩をここで返さねば、男が廃(すた)る。幸い自分も新車購入の為の資金を用意していたこともあり、この機会を逃すまいと心に誓った。

続く。
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