榎本正一 フルートリサイタル with チェロ

2018年4月7日(土) 18:30 新潟市音楽文化会館 榎本正一 フルートリサイタル with チェロ

第1部
 「忠実な羊飼い」より ソナタ ハ長調/シュドヴィーユ(伝ヴィヴァルディ) (Fl,Cemb,Vc)
  ~Preludio~Allegro assai~Sarabnda~Allegro~
 ラ・フォリア(抜粋)/マレ (FL)
  ~テーマと12の変奏~
 ソナタ ホ短調 BWV1034/J.S.バッハ (FL,Cemb,Vc)
  ~Adagio ma non troppo~Allegro~Andante~Allegro~
第2部
 セレナーデ(歌曲集「白鳥の歌」より)/シューベルト ベーム編 (Fl,Pf)
 菩提樹(歌曲集「冬の旅」より)/シューベルト ベーム編 (Fl,Pf)
 ジェットホイッスル/ヴィラ=ロボス (Fl,Vc)
  ~Allegro non troppo~Adagio~Vivo~
 無伴奏チェロ・ソナタ 作品8よりFantasia & Toccata/クラム (Vc)
 シチリアーノ/フォーレ 小西奈雅子 編 (Fl,Pf,Vc)
 「ミニヨン」によるグランドファンタジー/タファネル (Fl,Pf)

榎本正一(Fl)
高木明子(Pf,Cemb)
宇野哲之(Vc)

仕事を終え、音楽文化会館へ。開演40分前に到着。
感想は、「フルートと脇を固める伴奏群の上質な調べに耳を傾ける」です。
まずはシュドヴィーユ(伝ヴィヴァルディ)の「忠実な羊飼い」より「ソナタ ハ長調」。優しく穏やかに草を食(は)むプレリュード。明るく軽快に弾(はず)み、時に低く囀るアレグロ・アッサイ。息長く、暖かな日差しに映えるサラバンダ。溌剌とした息吹で、歯切れ良く急ぐアレグロ。柔らかく明快な音色(ねいろ)で、古(いにしえ)の温もりを伝えました。続いてフルートのソロでマレ「ラ・フォリア」の抜粋。暖かくもちょっと寂しい彩りで始め、軽やかに、力の抜けた素振りで振舞い、小さく跳ね、細やかに波打ち、落ち着きを見せて認(したた)め、柔らかく旋回し、水飛沫(みずしぶき)を上げて、急ぎ足で駆け抜けました。第1部最後はバッハの「ソナタ ホ短調」。綿毛が舞い、孤高の悲しさを綴るアダージョ。繊細な糸を素早い動きで編み上げ、時計仕掛けのからくりを、絡め合いながら組み立てるアレグロ。雅(みやび)な面持(おももち)で歩み、ふっくらと太い筆で揮毫し、光を滲ませて、時を刻むアンダンテ。先を競い、微細な波動を描いて、速足で進む2度目のアレグロ。崇高で精緻な立像を築きました。
休憩を挟んで後半はシューベルトの2曲からスタート。甘やかな浪漫を歌い、翳りを帯びた温もりを伝える「セレナーデ」。さざ波の中を、真っ直ぐに伸びた憧れを奏で、ふと横切る影を垣間見て、広がる波紋に打ち震え、ふらふらと迷走する「菩提樹」。親しみやすい歌を端正に届けました。続いてチェロとの二重奏でヴィラ=ロボスの「ジェットホイッスル」。小さな気流を巻き起こし、乾いた光の筋を残して、絡みつく枝と戯(たわむ)れ、煌めきで飾るアレグロ。明るさを艶消しで覆い、塩味を効かせて浮遊するアダージョ。神秘の耀きを映し、悪路を揺れながら走行して、渦巻きの一撃を幾度となく噛ませ、クルクルと回りながら降下するヴィーヴォ。風変わりな技の応酬で、曲芸を演じました。次はチェロの独奏でクラムの「無伴奏チェロ・ソナタ」。響きを泡立て、冷たい灰色の調べで伸び上がり、光の偏りを濾過するファンタジア。次第に速度を上げ、胸を掻きむしり、奇妙な味わいを匂わせ、無数の蟲が蠢(うごめ)くトッカータ。新しき成り立ちの曲想を届けました。フルートとピアノが戻ってフォーレの「シチリアーノ」。春霞の空に切なさを乗せて、時に輝き、心揺さぶる調べで胸を締め付けました。プログラム最後はタファネルの「『ミニヨン』によるグランドファンタジー」。南欧の陽光の中、ゆったりと船出し、大空を自在に駆け巡り、檸檬(れもん)の香りを漂わせ、迫りくる風と対峙して、日差しの中を楽しげにスキップし、寛(くつろ)いで歌い、華麗に踊り、ヒラヒラとしたフリルを靡(なび)かせ、高らかなる丘を爽やかに吹き過ぎました。
会場からは大きな拍手が贈られ、それに応えてのアンコールが3曲。最初は後藤丹編曲の「BEATLES CUPSULE」。「ノルウェーの森」を涼やかに、「ペニー・レイン」を軽く、「フール・オン・ザ・ヒル」を落ち着いた悲しみで、「レット・イット・ビー」と「ヘイ・ジュード」を上手に絡め、「ロング・アンド・ワインディング・ロード」を美しく、「ユー・ネバー・ギブ・ミー・ユア・マネー」をしっとりと奏でました。そして武満徹が2曲。「島へ」を遥かなる憧憬を持って、「めぐり逢い」を仄かな甘さで彩って、にぎにぎしく終演となりました。
古楽から現代まで。高尚なる芸術と親しみやすい名曲を組み合わせて、聞きごたえのあるプログラムで楽しませて頂いたことに感謝して、喜ばしい気分で、家路を急ぎました。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する