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春のリサイタル 2018 ソプラノ柳本 幸子×ピアノ田中 幸治

2018年4月21日(土) 14:00 だいしホール 春のリサイタル 2018 ソプラノ柳本 幸子×ピアノ田中 幸治

【第1部】
 うぐいす/武鹿悦子 詞 木下牧子 曲
 さくらさくら/日本古謡 山田耕筰編
 花/武島羽衣 詞 瀧廉太郎 曲
 砂山/北原白秋 詞 山田耕筰 曲
 五木の子守歌/熊本民謡 福島雄次郎編
 さくら横ちょう/加藤周一 詞 中田喜直 曲
 さくら横ちょう/加藤周一 詞 別宮貞雄 曲
 うぐひす~春夫の詩に依る四つの無伴奏歌より~/佐藤春夫 詞 早坂文雄 曲
 舞~六代目菊五郎に夜娘道成寺に寄せて~/深尾須磨子 詞 橋本國彦 曲
 初恋~短歌集《一握の砂》より~/石川啄木 詞 越谷達之助 曲
【第2部】
 バラとナイチンゲール/R=コルサコフ
 ポプラの林へ行ってきた~歌曲集《四つの愛のマドリガル》より/ロドリーゴ
 髪~マチネ・ポエティックの4つの歌曲~/原篠あき子 詞 中田喜直 曲
 私が死んでも~ロセッティの4つの詩~/ロセッティ 詞 木下牧子 曲
 悲歌/尼崎安四 詞 猪本隆 曲
 風を見た人/ロセッティ 詞 木下牧子 曲
 さびしいカシの木/やなせたかし 詞 木下牧子 曲
 竹とんぼに/岸田衿子 詞 木下牧子 曲
🌸 会場の皆さんと一緒に歌う 🌸
 砂山/北原白秋 詞 山田耕筰 曲
 故郷/高野辰之 詞 岡野貞一 曲

柳本幸子(S)
田中幸治(Pf)

10km走って、昼食を摂り、少し休憩してから、だいしホールへ。
感想は、「日本歌曲の奥深さに、興味深く足を踏み入れる」です。
まずは木下牧子の「うぐいす」から。柔らかく暖かな日差しが差し込み、艶やかに春の訪れを告げました。続いて山田耕筰編曲の日本古謡「さくらさくら」。ふつふつと水脈が沸き上がり、穏やかに光が匂い立ちました。次は瀧廉太郎の「花」。さらさらと流れ、すっと立ち上がって、優しく包みました。ここ新潟に因んだ山田耕筰の「砂山」では、冬の憂鬱な曇り空が覆い、夕暮れの悲哀を描きました。さらに福島雄次郎編曲の「五木の子守歌」になると、砕け散る硝子の破片が飛び散り、灰色に染まる憾(うら)みを綴り、ふわりと包み込んで、枝葉を崩しました。ここで同じ「さくら横ちょう」の詞につけた2つの曲の聴き比べの趣向。"中田喜直"版は哀しみを波立たせ、光明へ転じて、ゆらりと揺れると、"別宮貞雄"版では、儚(はかな)く香る気配を浮かべ、込める想いが階梯(かいてい)を登り詰めて、大きく伸びあがり、やがて静謐に収束しました。「七人の侍」等、黒沢明の映画音楽で有名な早坂文雄の「うぐいす」。無表情の面(おもて)に、微かに滲(にじ)む悲しみを湛え、すっくと立つ蝋燭の炎が揺らめいて、張り詰めた歌謡を一筆書きで認(したた)めました。続く橋本國彦の「舞」では、振袖を宙に投げ出し、幽玄の影を際立たせて、少女が鬼に変わる瞬間を切り取り、劇的な場面を演じて、一幕の物語を映しました。第1部最後は啄木の詩に越谷達之助が曲を付けた「初恋」。まろやかな切なさが拡がり、一筋の暗雲が低く垂れ込めて、大空へ舞い降り、淡い憧れを綴りました。
休憩を挟んで後半は外国の曲を2曲。砂塵舞う乾きに唐草を絡めて、暑さに裏打ちされた翳りを歌うリムスキー=コルサコフの「バラとナイチンゲール」。喜びを満開にして走り出し、陽光が降り注ぐ街路を、速度を落としつつ進む「ポプラの林へ行ってきた」。爽やかな風を吹かせました。続いて中田喜直の「髪」。鈍色(にびいろ)の衝撃が走り、息吹が色を取り戻して、滑らかに輝きに変わり、想いを大きく叫んで、穏やかに降下しました。次はロセッティの詩についた木下牧子の「私が死んでも」。響きの煉瓦を積み上げ、その間をすり抜ける声の鋭さが、高く低く上下し、ゆっくりと張りのある艶めきを放って、辛(つら)い思い出を書き記(しる)しました。猪本隆の「悲歌」では、落ち葉舞う風吹く街角で、募(つの)る思いを解き放ち、四方へと広角に撒き散らして、落着きを取り戻し、やがて囁(ささや)きへと転じました。プログラム最後は三度(みたび)の木下牧子で3曲。真っ直ぐに伸び、涼やかに灯(あか)りを開け放つ「風を見た人」。吹きすさぶ寒風を避け、お互いに親しく寄り添う「さびしいカシの木」。煌めきを鏤(ちりば)め、辺り一面に希望を散布して、喜びを共有する「竹とんぼに」。多面的な性格を鮮やかに描き分けて、本編を締め括りました。
ここで配られた冊子に歌詞を載せてある2曲を会場全員で合唱するコーナー。影を纏った春霞が漂う「砂山」。伸び伸びと懐かしさが渦を巻く「故郷」。歌う喜びを皆で分け合いました。
そして事前の告知のない曲目、即ちそれはアンコール。ビゼーの「カルメン」からのお馴染みの歌達が次々と披露されて、にぎにぎしく終演となりました。
自国の歌曲について、その奥深さを知らしめ、馴染みの少ないものに光を当てて、その良さを聴衆へ届けるこのリサイタルが、素晴らしい出来栄えで多くの人々に感動を与えたことを確認して、喜ばしい気分で、帰路に付きました。
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