Aber eins あーばーあいんす Vol.2

2017年8月4日(金) 19:00 ヤマハミュージックリテイリング新潟店7F スペースY Aber eins あーばーあいんす Vol.2

『イタリアの歌の本』より/ヴォルフ
 Auch kleine Dinge konnen uns entzucken
 ・どんな小さなものでもうっとりさせられるものがあるわ・
 Ich hab'in Penna einen Liebsten wohnen
 ・あたし、ペンナに彼氏がいるの・
『3つのペトラルカのソネット』/リスト
 Pace non trovo, e non ho da far guerra
 ・平和が見つからず、さりとて戦おうともせず・
 Benedetto sia 'l giorno, e 'l messe, e l'anno
 ・祝福あれ、あの日、あの月、あの年・
 I'vidi in terra angelici costumi
 ・私はこの地上で天使の姿を・
『スペインの歌の本』より/ヴォルフ
 Sie blasen zum Abmarsch
 ・出陣のラッパが鳴っているわ・
 Geh, Geliebter, geh jetzt
 ・行って、愛しい人よ、もう行って!・
『歌のかたちの詩』/トゥリーナ
 Dedicatoria
 ・捧げもの・
 Nunca olvida
 ・忘れない・
 Cantares
 ・うた・
 Los dos miedos
 ・二つの恐怖・
 Las locas por amor
 ・至上の愛・

斎藤晴海(Pf)
〇ゲスト〇
吉川かおり(S)

仕事を終えて、一旦帰宅し、車を置いて、新潟まつりの民謡流しの雑踏の中を歩いて、ヤマハへ。開演20分前に到着。
感想は、「歌とピアノによる音楽による素晴らしいドラマに打ちのめされる」です。
最初に出演者の2人からこのコンサートの主旨である"伴奏"について、実演を交(まじ)えた講演がありました。中田喜直の「夏の思い出」を題材に、
 ①ピアノ伴奏が、自分の演奏に手いっぱいで、歌手への配慮もなく、ただ楽器を打ち鳴らし、歌と音量を競い合う結果になってしまう例。
 ②ピアノ伴奏が、自分を殺して、ひたすら歌に合わせ、その結果、生気の乏しい演奏になってしまう例。
 ③ピアノ伴奏が、歌い易いように歌手を導き、上手く支えて、音楽の実りを結実させる例。
がステージ上で例示され、今回の演奏会が③を目指すことが誰の目にも明らかになりました。
一旦退場し、再度登場してコンサートのスタート。まずはヴォルフの『イタリアの歌の本』より2曲。「どんな小さなものでもうっとりさせられるものがあるわ」がゆったりと明るく、しかし物憂げな翳りも少し含んで、端正な面持ちで奏でられました。続く「あたし、ペンナに彼氏がいるの」では、駆け足で刻む伴奏の上を生きいきと走り抜け、てっぺんで大きく気を放ち、生命力を誇示しました。
次はリストの『3つのペトラルカのソネット』から3曲。切迫する鍵盤を受けて、緊張感漂う悲しみを描き、やがて切なく、穏やかに塗り替えて、ふんわりと収める「平和が見つからず、さりとて戦おうともせず」。夢見るように浮かび、喜びを柔らかに包んで、ゆっくりと揺蕩(たゆた)う「祝福あれ、あの日、あの月、あの年」。優しさで満たし、やがて高みへ駆け上がり、安らぎで癒して、煌(きら)めきを添える「私はこの地上で天使の姿を」。詩の表す心情を深く汲み取り、ピアノと歌が一体となってその世界を具現化し、まるで目の前で戯曲が演じられているかのような表現の豊かさで、聴衆を魅了しました。
3曲目は再びヴォルフで『スペインの歌の本』より2曲。「出陣のラッパが鳴っているわ」が、小走りに行進する打鍵に抗(あらが)うように、哀しみの影を映す歌唱の帯(おび)が長く引き伸ばされ、寂しさを描写しました。さらに「出陣のラッパが鳴っているわ」では、波立つピアノを背に、想いを込めた叫びが薄霞(うすがすみ)の衣(ころも)を纏(まと)い、葡萄酒の彩りを重ねました。
プログラム最後はトゥリーナの『歌のかたちの詩』から5曲。始めにピアノ・ソロで「捧げもの」。夏の夜に燃える篝火に吹く風が涼しさを運び、秘めた情熱を際立たせました。そのまま鍵盤が序奏を刻むと、客席の後ろからソプラノが歌いながら登場し、ゆったりと揺れながら、熱い心を明滅させる「忘れない」。内なる感情を空間へといっぱいに広げる「うた」。涼感を香らせ、愁いを表して、胸を締め付ける「二つの恐怖」。希望に満ちて、ハリのある歓びを鼓舞する「至上の愛」。欧羅巴南端の薫りを表情豊かに届けました。
会場からは大きな拍手が贈られ、それに応えてのアンコールは「帰れソレントへ」。朗々と切なさを伝えて、にぎにぎしく終演となりました。
"よい伴奏とは"を標榜する主旨を超えて、素晴らしい公演に育て上げたお二人の手腕に驚嘆し、まるでオペラの一場面を見ているかのようなドラマチックな仕上がりに感動をつのらせ、幸せなひとときを共有できたことに感謝して、喜ばしい気分で、家路を急ぎました。
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